幽霊が出る場所と聞くと、多くの人は古い廃墟や事故物件を思い浮かべる。
誰も住まなくなった家。
草に埋もれた病院。
夜中に近づいてはいけないトンネル。
だが、平成の日本で「幽霊マンション」と呼ばれた場所は、そういう場所ではなかった。
舞台は岐阜県富加町。
完成して間もない、新しい町営住宅である。
本来なら、そこは普通の生活が始まる場所だった。
引っ越してきた人たちが荷物をほどき、家具を置き、食器を棚にしまい、夜になれば部屋に明かりがともる。
怖い場所へ行ったのではない。
住むための場所が、いつの間にか怖い場所になっていった。
この町営住宅では、入居後しばらくしてから奇妙な物音や怪現象が語られるようになり、やがて住民、町役場、マスコミ、霊能者まで巻き込む騒動になっていく。